「庭猫」のやってくる自然体の暮らし-『庭猫』カメラマン安彦幸枝さん<前篇>
今月も29日=29cutecat(ニクキュートキャット)の日です!
今回は実家のお庭にやってきたという、半ノラ猫のアフくんとサブくんを撮影した写真集『庭猫』の作者で、現在、神田錦町テラススクエアビルにて「どこへ行っても猫と犬」展を開催中の安彦幸枝さんにお話を伺ってきました。
管理人の主観ですが、お住まいが近いことや、安彦さんの気さくでナチュラルな人となりも相まって、心地よい時間を過ごさせていただきました。
安彦さん:昔からすきです。
-庭猫だけでなく、家に飼い猫もいるんですよね?安彦さん:はい、飼ってます。
実家では、家の中に2匹飼っていて、庭猫が外から通ってくるんですけど、それと今住んでいるところでも1匹飼ってます。
たしかに写真集の中でご両親写られてますもんね。
安彦さん:そうなんです、そうなんです。
-なるほど。ちなみにその飼い猫ちゃんはおいくつくらいなんですか?安彦さん:12歳と13歳です。
-大人ですね。ということはもう結構長い間飼われてるんですか?安彦さん:はい、最近のねこは長生きで、家の中で飼えば病気も少ないし、事故に遭う危険性もないので、20年くらいは生きるみたいですね。
-たしかに寿命が延びているって聞きます。ということは、それだけねこちゃんと過ごしてきた期間も長いですか?
安彦さん:そうですね、元々は犬を飼ってたんですけど、犬が死んでしまって、その隙間にねこが入ってきた…という感じでしょうか。
両親ともに動物がすきで、二人とも身近に動物がいた環境でずっと育ってきたようです。
たまに、犬ねこに対して、「特に別に…」という人いますよね。
安彦さん:私の家族はどちらかというと、積極的に関わりたいタイプで。
最近、私の家(ご実家ではなく現在お住まいの)にも庭猫が来たんです。
安彦さん:ボサボサでガリガリで、はじめはタヌキかと思いました。
だれかが捨てていったと、近所の人に聞きました。
ご近所さんが植木の世話してる横で、ぼーっと座っていて、だいぶ年寄りでカサっとしてて。
「がんばってね、もう無理!と思ったらうちにおいで」と声をかけたら、翌朝、家のドアを開けたらすーっとうちに入ってきたの(笑)。
そのねこがいた場所から自宅は100mくらい離れているのだけど、ちゃんと訪ねてきた!慌ててごはんをあげました。
そうしたら、がっついて、がっつくのだけど、噛むのが辛そうでうまく食べられないので、口の中に潰瘍でもあるのかな、と病院へ連れて行きました。
やはり口の中が荒れていたようで、痛み止めをもらって与えたら、2,3日で回復して、今はもうがっついてもりもり食べてます。
-2,3日!薬さえあれば結構早くに治るものなんですね。安彦さん:完治してくれるといいのですが。
まさに実家と一緒の状態で、家の中に別のねこがいるので、室内には上げられなくて、今は庭でごはんあげています。
これで(『庭猫』のアフくん、サブくんのように)跳んだらおもしろいですね(笑)。
ありがとうございます。
このねこが今室内で飼っているねこで、この外にいるねこが、最近庭に来るねこです。
安彦さん:安彦さん:なじんでます。鼻がつまって、いつもスンスン言っているので、「スンスン」と名づけました。
(スマホをスワイプして次々にお写真を見せていただくと、取材当時の最新刊『anan』のお写真がありました)あ、『anan』!私も買いました。
安彦さん:1ページだけですが、『anan』のねこ号に庭猫を掲載していただいています。
-そうなんですか!まだちゃんと見られてないので、後で見てみます!(こちらの号(人気のため紙版は売り切れているもよう…)に掲載されています!)anan (アンアン) 2016年 2月17日号 No.1991【電子書籍】[ anan編集部 ] 価格:400円 |
安彦さん:スンスンは人恋しいのか、ちょっとでもドアを開けるとすーっと一緒に入ってこようとして。
-隙あらばって感じですね(笑)。安彦さん:そう、隙あらば。
でも、検査をしたらねこエイズが陽性で。かわいそうだけど家には入れられないのです。
喧嘩でひっかいたりすると、そこからうつってしまうらしいので。
安彦さん:鼻水で息がしづらそうだったり、涙が止まらなかったり、慢性的に風邪のような状態が続くそうです。
-たしかにたまに見かけますね、そういうねこちゃん。安彦さん:発症しないねこもいるみたいだけど、ねこエイズになると、あまり長生きはできないようですね。
-なるほど…そうなんですね…。安彦さん:昔はもっといっぱい見かけましたね、そういう状態のねこって。
-たしかに。最近ノラ猫自体も少ないような気がします。安彦さん:区によって、たとえば世田谷区など、ノラ猫はだいぶ減っているみたいですね。
というのも、猫ボランティアさんの団体がいくつかあって、それぞれが、ねこを保護し、ワクチンを受けさせていたり、去勢手術をしてから里親を探したり…と熱心にされているからだそうです。
安彦さん:ねこは年に二回、それも一度に数匹も産むので、どんどん増えていきます。
ネズミを捕まえて食べることもあるけど、山猫ではないから、家猫はそれだけで生きてくのは難しくて、どうしても人に依存していますよね。
でも、喜んでお世話してる人もいっぱいいるしね。私もそのひとりです。
安彦さん:下町にもたくさんいましたよね。
根津の「夕焼けだんだん」にも、前はもっといっぱいねこがいたけど。
…夕焼けだんだんには行ったことはありますか?
安彦さん:昔はいっぱいいたのだけど、あの辺りもねこボランティアさんのおかげで、今はだいぶ少ないみたいです。
いい結果だし、でも風景としてはちょっと寂しい、と、どちらも思います。
安彦さん:写真家の武田花さんの、下町のねこをモノクロフィルムで撮られている写真集がとても素敵です。
風景写真のようなんだけど、よくよく見ると、どこかにねこがぽそっといたり。
安彦さん:たぶん、今はもうない町並も写っていると思います。
時代の記録にもなりますね。
安彦さん:そうですね、最近はねこボランティアさんたちの努力により、放っておけばどんどん繁殖して、病気で早くに死んだり事故に遭ったりする悲しいねこが減りました。
でも、短命でも動物らしく、のびのびと生きるのも幸せかもしれない、とも思います。
自由に生きてほしいけど、事故で死んでしまうと悲しいし…。
安彦さん:難しいですね…。
ねことの出会いもご縁なので、怪我をしていたり、何日も食べてなさそうなねこに会ってしまったら、ついつい関わってしまいます。
安彦さん:このねこ(アフくん)は、秋に死んでしまいました。
-え!?安彦さん:とても、いいねこでした。
-去年の秋ですか?9月に、銀座の森岡書店という本屋で写真展を開いているその会期中に。
-そうだったんですね…。ショック…。安彦さん:それを森岡書店の森岡督行さんに伝えると、「アフちゃんはきっと無事に本が出版されて、展示がはじまるのを、見届けてくれたんだニャ…」となぐさめてくれました。
-かわいい(笑)。でもきっと本当に見届けてくれたんだと思います。安彦さん:去勢手術をすると、なわばり拡大の争いが減り喧嘩もなくなるはずなのですが、アフは最後まで喧嘩をやめませんでした。
いろいろあっても、それでも生きのびてきた不死身のねこで、「死なないねこ」だと思ってたんだけど、わりとあっけなく…。
最期は古傷をこじらせて、「調子悪いな」と思ってたら1週間もしないで死んでしまいました。
残されたサブは今も元気で、両親の愛情と、ごはんも一手に引き受けて、まるまると太りました(笑)。
安彦さん:アフの方が先に庭猫になり、1年ほどしてからサブを連れてきました。
アフはよそのねこには怖くて厳しいのに、サブにだけはとてもとても優しくて、弟分として大切に守っていました。
安彦さん:ごはんの時間に庭にサブがいないと、アフが「ごはんだよー」とサブを呼ぶ。
そうしたらサブがどこからか帰ってきて、アフは先にサブに食べさせていました。
安彦さん:面倒見がいいというか、そういう優しさがアフにはありました。
サブ専用の優しさなんだけど。
本当に仲が良くて、二匹はいつも一緒でした。とてもいい関係でした。
安彦さん:1年違いで来たから、兄弟ではないと。親子かな?
でも、ねこに詳しい人に聞いたら、ねこは離れて暮らす時間が長いと、親子だとわからないものだそうです。
3年後に再会したら、親がわかるって聞いたことあります。
(※取材後、いろいろ調べてみたところ、それぞれ個体差はあるようですが、ねこは子どもが覚えていても母猫が忘れているケースが多く、犬は離れてから3,4年程度であれば再会時に思い出すケースが多いようです)
安彦さん:えらい、犬!
-そうなんだ!でもねこにもあるんだと思ってました、そういうの。母猫が子猫をまさしく「ねこかわいがり」したり、高いところから落ちそうになったときに、ぎゅーって抱きとめて助ける動画とかをよく見るので。
安彦さん:続けて見てしまいますよね、そういう動画は。
親子じゃなくても、2匹は気の合うねこだったみたいですね。
(今回のカメラマン山本氏による、安彦さんの名刺の撮り方に気づき)…それ、おもしろい(笑)。
そういえば、アフは般若顔でこんなにおもしろいコワモテの顔をしていますが、高くてか細い、かわいい声をしてました。
-かわいい。このファニーフェイスもまた愛嬌というか。…でも死んじゃったんですね…。ちょっとまだショックが続いてます…。
安彦さん:今まで、散々大けがしても持ち直してやってきたから、もしかしたら、入院をすれば生きのびたかもしれないけれど、もうそろそろしんどそうでもありました。
-たしかに。それもさっきの話と通じますよね。自然に死期が近づいてきたら、そのまま死なせてあげた方がいいのかなって。
安彦さん:そうですね。やっぱり自然の一部だから生き物は。
-その、最期の瞬間は、安彦さんのご実家に来ていたときにパタッという感じだったんですか?安彦さん:最期はやはり庭で。
私は普段は離れて住んでて、忙しい時期でもあったので、会いには行けませんでした。
でも、よその庭でなく、うちの庭で良かったねと、家族は言っていました。
安彦さん:ほんとに、いいねこでした。
たくさん跳んで、たくさん食べて。
アフが庭で気持ちよさそうに寝ていたことは、家族にとって幸せな思い出です。
まさか自分が『anan』に載るなんて、もちろんねこにとってはどうでもいい話だとは思いますが、でもそうやってアフちゃんが生きたことを残せたことは良かったな、と思ってます。
<次回、後篇に続きます!>今回取材に応じてくれた安彦幸枝さんの『庭猫』はこちらです。
価格:1,512円 |
インタビュー・文:浦田みなみ(29cutecat管理人)
取材写真:山本諒(Facebook・Instagram)
サムネイル、記事内画像:安彦幸枝さん撮影
COMMENTS & TRACKBACKS
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安彦幸枝さんのインタビュー後編はどこで見られるのでしょうか?
山田さま、コメントありがとうございます!
読んでいただけて大変うれしいです。
後篇ですが、まだ公開していない状況です。
今後UPしたいとは思っておりますので、
気長にお待ちいただけるとうれしいです。
(29cutecat管理人MU)