クリエイターとプロデューサーの二足のわらじ-『煉と虎徹』ネコグラファー前田悟志さん<後篇>

クリエイターとプロデューサーの二足のわらじ-『煉と虎徹』ネコグラファー前田悟志さん<後篇>
実は金髪は煉さんに会うための「キャラ作り」
‐正直私はビジュアル系に疎くて、煉さんのことも今回の虎徹くんがきっかけで知ったんです、おはずかしながら。

前田さん:あ、いえいえ、僕もそうでした。
たぶんそういう人多いんじゃないかな。
この本で煉さんをすきになってライヴに行くっていう人も多いらしいですよ。
僕も3,4回行きましたけど、「あ、ネコグラファー来てる」とかって言われました(笑)。

‐やっぱり目立つんですね。

前田さん:うん、目立つ…。
それで、最後に煉さんのドラムソロがあるんですけど、その最後の「決まった!」っていうときに、観客席でこう、ねこのポーズをしてる人がいますね。
「あー、虎徹ファンか」と思って(笑)。
それはもう煉さんも気づいてたらしくて。

まぁそういう相乗効果があっていいんじゃないですかね。
THE BLACK SWANのアルバムも4月末くらいに出るんで。(※取材時は発売前でしたが、現在は下記アルバム『OUSIA』を絶賛販売中です!)
実際、『煉と虎徹』と一緒に買われている方もいっぱいいるみたいなので、バンドのみなさんにも貢献できれば、それが一番いいな、と。

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‐たしかに私自身も、ビジュアル系って正直、個人的には勝手に怖そうなイメージを抱いていたんですけど、知ったきっかけは虎徹くんですけど、TwitterとかTVで煉さんの姿やバンドメンバーの姿を見て「なんだ、優しいお兄さんじゃん」っていう、先入観を取っ払うきっかけになりましたね。

前田さん:煉さんの撮影させてもらうことになって、当時、煉さんは真っ赤な髪をしていて、それに負けちゃいけないと思って金髪にしたんですよ。
なめられちゃいかん!と思って(笑)。

‐それまでは金髪じゃなかったんですか?

前田さん:うん、黒でした。
だからこの本のためのキャラ作りで金にしたんですけど、2回目の撮影のときに煉さんが黒にイメチェンしていて、「裏切ったな!」と思って(笑)。
でもこれで定着しちゃったんで、もうやめられないな、と。

金髪が目立つ前田さん ‐じゃあ今後も金髪は継続されるんですか?

前田さん:うーん、もし『煉と虎徹2』が出たらまた金髪にしますけど、また別の本のときは変えると思います。
でも訪問撮影とかしていると、飼い主さんと駅とかで待ち合わせることが多いんですね。
で、そのときに金髪の方が会いやすいんですよね。
今日みたいに、「○○駅に金髪が行きます」って言うと見つけやすいので。(今回の取材はカフェでの現地待ち合わせだったのですが、お陰でとてもスムーズにお会いすることができました)

‐たしかに。今日もすぐわかりました。

前田さん:でしょ?だからまぁ悪いことだらけじゃないんですよね。
でもまぁ真っ赤にしたり、とかはないですけど。

‐なるほど、金髪もセルフプロデュースの一環だったっていうことですよね。

前田さん:うん、そうですね。この子…虎徹くんを撮ったカメラマンもビジュアル系だった、っていう方がおもしろいじゃないですか。

‐たしかに。なるほど。

前田さん:結構、煉さんと二人で取材受けることも多くて、で、そうなると記事になったときに「どっちがビジュアル系だよ」みたいなことを言われると、「勝った!」みたいな。
少しでも話題になるような作戦は立てていますね。

今後の展開と病気のスコティッシュフォールド、もも次郎くん
‐現段階でなにかお話できる展開はありますか?

前田さん:えーと、そうですね、今のところ別のねこちゃんで1冊写真集を出すのは決まっていて、あと、ビジュアル系でもう1冊決まりそうなのがありますね。

‐そのリストバンドがあるということは、ほかにもたくさんビジュアル系でねこ好きの方がいらっしゃるってことですよね。
リストバンド
前田さんが腕につけているのは、「V系が動物を救う!」と、捨て犬猫の保護活動や啓発活動をしているVISUMALさんのリストバンド。

前田さん:うん、なので、それを1冊にまとめようかな、って感じですね。
アメリカに『Metal Cats』っていうロックバンドの人たちがやっている猫救済のためのチャリティー本みたいなのがあって。
コテコテに入れ墨した人がねこを抱えてる、みたいな感じなんですけど。

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前田さん:それの日本版を作ろうとしている感じです、今。

‐おもしろそう。日本だけでなく世界単位で、ねこ好きのビジュアル系の方って多いんですね。

前田さん:多いですね。
飼っていなくても動物愛護に興味があるって人も多いです。
だからそういう人たちに出ていただいて、ねこがどんだけすきかを語っていただいて、で、その売り上げをシェルター建設とか保護猫のために使えればなーっていう構想があって。

‐うんうん、素敵な展開ですね!

前田さん:あと、さっき言っていた「もう1冊」っていうのが、僕のFacebookのヘッダーにも記事を載せているんですけど、スコティッシュでちょっと病気になった子がいて。

前田さん:スコティッシュの、耳が垂れてるっていう特徴も元々は軟骨の病気なんですよね。
で、軟骨にこぶができる「骨瘤」って病気があるんですけど、生まれてすぐにその病気を発症した子がいて、ブリーダーさんが処分…しようとしたんですよね。
それを今の飼い主さんが引き取って、今は元気に成長しているんですけど、まぁそういう現実を知ってもらいたいというのもありますし。

ねこだっていろんな病気かかるじゃないですか。
風邪だってひきますし、怪我もするし、猫エイズもあるし、白血病にもなるし、だからどんな病気になっても最期まで添い遂げてくださいっていうのを訴えかける本を1冊作ろうとしていて。
今「猫ブーム」っていわれていますからねぇ、流行でねこを飼ってくれた人に読んでもらいたい1冊を作ろうかな、としていますね。

‐たしかに今「かわいい」というだけでお世話するあれやこれやを考えずに飼い始めてしまって、それで「部屋を汚すから」とか「服が爪で破けるから」とかって理由で手放してしまう方も現実にいるらしいですもんね。
その前にまず考えるきっかけを与える本っていうのは必要かもしれないですね。


前田さん:うん、『煉と虎徹』自体も猫ブームを加速させる原因でもあるので、ブームを作った人間としては、ちゃんとそういうのを伝えるってこともしていかなきゃいけないな、と思っていますね。
ねこはかわいいだけじゃないんだよって。

‐そうですね。
個人的には、このサイトを立ち上げる前から元々ねこ好きなので、ブームになっていろんなところで見られる機会が増えたのはうれしいんですけど、でもアクセサリー感覚で飼い始める人もいるというのを聞いて、ちょっと同じねこ好きとしてショックもあるんですよね。


前田さん:そうですね。昔のシベリアンハスキーとかチワワブームのときもやっぱり結局最後は捨てられたり…っていうのがありましたから。
だからこの猫ブームもどうなるか怖いですよね。

しかも、やっぱりいろんな動物番組でランキング1位はスコティッシュだったりするので、一番人気のある子だけど、その子にはこういう病気があるんだよっていうのを知ってほしくて。
まぁ「だからスコティッシュを飼うな」っていうわけではもちろんなくて。
スコティッシュでこういう病気を発症しても捨てちゃだめだよっていうのを言いたいなーと思って。

‐うんうん、大事ですね。

前田さん:で、またその子…もも次郎くんがかわいいんですよ。

前田さん:あっ、その子がさっきお見せした(取材前にちらっと見せていただいていたのでした)この子です。

もも次郎くん
取材前に撮らせていただいていたもも次郎くんチャーム。
‐なるほど、この子が!たしかにグリーンの目だ!

前田さん:このほかにノーマルと髭バージョンもあるんですけど、こういうグッズになるくらいかわいいんですよねー…。
こんなかわいい子が捨てられようとしていたっていう…、信じられないですよね。

‐ほんとに信じられないですね…。

前田さん:それで、まぁそれが落ち着いたころに『煉と虎徹2』かな(笑)。

‐出ますか!

前田さん:出したいですけどねー、どうでしょうか。

‐期待して待ってます!
ねこさま・飼われ主さまのために~知識を独占しない柔軟さ
取材中… ‐前田さんみたいな方はなかなかいらっしゃらないですね。
こう、ネコグラファーとして作品づくりもしつつ、その作品を通して猫救済に役立てようとしたり、ブームに乗って飼おうとする人に警鐘を鳴らしたりっていうのは、なかなかできないことですよね。


前田さん:そうですかね。まぁ僕もほら、家猫専門なので、ノラ猫…外猫は撮らないんですよね。
だからかもしれないですね。
処分されそうになっている子とか、保護猫カフェとか引き取られた子とかをいっぱい見ているので、その活動を応援したいって気持ちがほかの方より大きいのかもしれないですね。

‐そうですね、ご自身でも引き取ったねこを飼われてますしね。

前田さん:そうですね、それが一番大きいかもしれない。
で、あんまり猫写真家の人でねこ飼ってる人って実はそんなにいないので。
まぁ飼いたくても飼えないって事情がほとんどだと思うんですけど。
その違いかもしれないですね。
で、やっぱり僕としては、さっきも言いましたけど、ねこで稼いだからにはねこに還元したい、っていうのが一番なので、まぁそこですかね。

‐そうですね、その言葉って瞬間的に「ねこで稼ぐ」ってところにビジネス感を覚えそうですが、実はとてもねこへの思いに詰まったいい言葉ですよね。

前田さん:うん、うちの会社の社訓っていうのがあって、会社のトップページに書いてあるんですけど、「全ては猫さまのために飼われ主さまのために」っていう。

社訓を見せる前田さん
自社サイト掲載の社訓を見せてくれる前田さん。
‐「飼われ主」!

前田さん:ねこって、人を飼う方じゃないかなーって。
結局人間の方が下になる…っていうか。
なんか、どっちが飼われてるかわかんねーな、って(笑)。
結構その考えに賛同してくれる人がいるので、「飼われ主」って言葉をよく使うんです。

みんなが幸せになるような仕事ができればいいなーと思ってるんですけど。
まぁ『煉と虎徹』っていうのはその第一歩だったんですけど、それは成功してよかったなってひと安心しているところですね。

‐そうですね、大成功ですね。

前田さん:あとは写真展の手ごたえ次第ですね。
これで東京の写真展がコケちゃうと地方巡業できなくなっちゃうんで。

煉と虎徹イラスト
写真集でも写真展でもアイコンとして使われていた煉さんと虎徹くんのイラスト。
(画像出典元:Facebook Todays Gallery Studio)
‐そうか、地方も回られる予定なんですね。

前田さん:そうですね、一応ギャラリーの会社の方とも話していて、「一緒に地方回ろうよ」って。
それで、クラウドファウンディング使っていこうかなと思っていて。
たとえば「福岡でやりたいので寄付してください」って言って資金集めすると、福岡で行きたい人が資金募ってくれるじゃないですか。

それで実際に福岡で行って、寄付してくれた人にはプレミアムチケットを特典で差し上げたり、写真展開始前日に、その寄付してくれた人たちだけの写真展をやったり。
あとはまぁ記念のグッズを差し上げたり、と、そういった形で地方巡業やっていきたいなーと思っていまして。

‐なるほど。

前田さん:話題にもなるし、今までそんな写真展ないですからね。
見たいという人がどのくらいかもある程度わかるので、どのくらいの規模ですればいいのかっていうのもわかるんで。
そうやって回っていこうかなって。

そういう企画って今までなかったし、若い写真家とかってそういうのやればいいと思うんですよね。
クラウドファウンディング使ってお金を集めて写真展をやるっていう。
だから真似してほしくて、「じゃあまずは自分でやろう」っていう。

‐なるほど、前田さんの行っていることって、次につながることが多いですね。

前田さん:あ、そうですね。
Twitter使って直接飼い主さんとコンタクトとって撮らせてもらって、本を出すっていうのもだれでもできることなので、だからもうそれやってもらって、どんどんそういう人が増えていったらいいし、それでデビューしたらうちの会社に入ってもらえばいいんで(笑)。

‐なるほど(笑)。じゃあ「その手法はうちの専売特許だよ」みたいな感じではないんですね。

前田さん:全然。だれでもできることだし、だれにでもやってほしいと思っているので。
「あいつ俺の真似しやがって!」みたいな、そういうのが僕は嫌いなんですよね。
真似っていっても、僕自身もたぶんだれかしらの真似してると思うんで。
芸術関係ってたぶんみんな真似して上に上がっていくじゃないですか。
真似っていわなくてもお手本っていうか、習字もそうじゃないですか。

お手本があって、それを見ながら綺麗に書いて、で、そこから自分らしさを身につけて巣立っていくじゃないですか。
だからその見本になりたいなーっていうのはずっと思っていて。
写真家ってイメージ的に若い芽をつぶす感じの人がわりと多くって、それは業界的に良くないよなーっていうのを感じていて、僕もつぶされる側だったので。
いっぱい邪魔されたりなんだのっていうのは経験してきたので、逆に僕は若い子には優しくしたいというか、伸ばしていきたいなーと思いますね。
そうやってたら、その会社にも自然と人が集まってくるんじゃないかなーと思って。

‐そうだと思います。そういうのって自然と広まっていくものですもんね。

前田さん:うん、で僕もネコグラファーって名乗りたいですって人がいたら、言ってくれれば「どうぞどうぞ」ってなるので。
そうやってネコグラファーっていう名前がどんどん広まって、その内ユーキャンとかで資格が取れるようになったりして、そこまでできたらいいなーって。

‐すごい、そこまで考えてらっしゃるんですね。

前田さん:うん、それはちょっと考えていて。
やっぱりねこを撮る手法とかって独特のものがあるんで。
それをどんどん広めていったり、あとはねこの飼い方とか、ねこの接し方とか、そういうのを含めて一つの資格として「ネコグラファー」っていうのができたらいいなーっていうのを、最初に考えましたね。

‐なるほど、随分と先まで見据えていますね。

前田さん:うーん、まぁやってることはほとんどねこを撮ってるだけですけどね。
でも一応そこまで考えて、会社を起ち上げて、会社を回していくためにもこうして本を出したりとか、そういう感じですね。

‐なるほど、一つの作品に留まらないってことですね。
作品が作品としてだけでなく。


前田さん:うーん、どっちがいいのかわかんないですけどね。
本当はね、作家としてはその作品をいつまでも愛する気持ちはもちろん大切なんですけど、やっぱり次はどうしよう、次はどうしようって常に考えるものっていうのを前の仕事でも勉強したので。
といっても、処女作でもあるし煉さんもすごいいい人なので、いつまでも大切な一冊ですけどね。

缶バッチ
こちらは取材時、前田さんが持っていたバッグにつけられていた缶バッチ。
これだけ作品のグッズを身に着けていたら大切にしているのは伝わります。
‐もちろん、もちろん。でもそういった視点でも見られていたんですね。

前田さん:そうですね、もしかしたら僕が一番この本を第三者的な目線で見ているかもしれないですね。
だからたぶん、プロモーションだったりとか、そういうところに気が回るんだと思うんですよね。

もしも主観的にこの本を見ていたら、もう「この本いいから絶対買えよ!」っていうふうにしかTweetできないですし。
やっぱり僕自身が一歩引いて見ているんだろうなーと思いますね。

‐そうですね、でもそれって大事なことですよね。
とはいえなかなかそれができるクリエイターさんって少ないと思うので、すごいことだと思います。


前田さん:そうですね、でもそれはほら、僕も写真の専門学校に出て、だれかの弟子についてカメラマンになったとかっていうわけじゃないので。
普通のサラリーマンから脱サラして…っていう経験が、やっぱり役に立ってんだろうなーって気はしますね。

すきな言葉は「癒着」

前田さん:本の撮影秘話とかを話す感じかなーと思ってたら…意外となんか、広がっちゃいましたね(笑)。

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‐そうですね、でもこちらとしては貴重なお話聞けて本当に楽しかったです。

前田さん:いえいえ、良ければねこ関連のライターさんとしてなにか一緒にお仕事しましょう。

‐ぜひ!やったー、思わぬときにお仕事入った(笑)!

前田さん:いや、でもそういうものだと思うんですよ。
僕はそういうやり方がすきなので。
大好きな言葉が「癒着」なんですけど(笑)。

‐(笑)!意外な言葉が(笑)。

前田さん:響きは悪いけど、一人の人が僕はいいなと思ったら、その人ととことん付き合って仕事をしていくっていうのがすきなので、たとえばだれかが「ライターさん紹介して」って言われたときにこう、お話を持って行ったりとか、そういう「癒着」がだいすきなんです。

‐そうですね、「癒着」(笑)。

前田さん:癒着って一種のチームビルディングだと思ってるんで。

‐そういうことですよね、「癒着」って聞くと一瞬、「ん?」って感じですけど。

前田さん:でもそのメンバーと深く付き合って一緒に仕事をしていくっていうだけなので、まぁそれをね、おもしろおかしく「癒着」って言ってますけど。
まぁどんどん癒着していければ、と。
「癒着がひどい」って言われるくらい(笑)。

‐「癒着がひどい」(笑)、すごい語弊のありそうな言葉ですね(笑)。

前田さん:うん、僕にとっては褒め言葉なんですけどね(笑)。

前田さんの29cuteポイント
前田さんちのねこちゃんたち
前田さんちのふくちゃんと小梅ちゃん。
(画像出典元:前田さんちの猫事情。)
‐最後に一つお聞きしたいんですけど、うちのサイトの名前が「29cutecat」っていって、「肉球」と「キュートキャット」を合わせた造語なんですけど、「肉球」のようにピンポイントにかわいいと思うねこの部分=「29cuteポイント」ってありますか?

前田さん:僕はねこって世界一ポジティブな動物だと思うんですよ。
っていうのも、たとえばねこを拾ってきたり保護したりしても、その家に対して文句言わないじゃないですか。
「狭いから引っ越せよ」とか。

‐たしかに(笑)。

前田さん:ねこって病院に入院している子だろうが、おうちで飼われている子だろうが、ノラ猫だろうが外猫だろうが、自分のいる環境の中で自分が一番居心地のいい場所っていうのを必ず持っているんですよね。
だからそういう環境に順応する能力と、それを楽しむポジティブさっていうのは、たぶん動物の中で一番強い…と思うんですよね。

‐たしかに。で、本人はそんなこと思っていないところがいいですよね。

前田さん:うん、それで例えば病気の子だったり、こう…脚が一本なくなってたり、そういう子でも、自分がねこってことを気づかないくらい自分の人生を楽しんでいる。

そこが僕はすごい魅力だと思ってて、だからねこの魅力を伝えたいっていうのもあるし、僕自身がそういうねこみたいに生きていきたい、ばかみたいにポジティブになりたいっていうのがあって、こういう仕事をしているんですけど。
そこはぜひ伝えてほしいですね。

‐なるほど、まさかそんな深い答えが返ってくるとは(笑)。
たしかにねこってそういうところありますよね。
たとえば後ろ足二本ともなくしちゃったねこちゃんも、逆立ちして過ごして、それが普通だと思って生活してますもんね。
そういうところが素敵ですよね。


前田さん:うんうん。もうだって「後ろ足なければ前足で生活すればいいや」くらいの感じですもんね。
でも人間ってなかなかそんなことできないじゃないですか。
自分が脚を失ったら…ってことを考えると、もう立ち直れないかもなーって思うんで。

‐たしかに、二次災害というか、それによってメンタルをやられてしまって、外に出たくないとか、それで友だちと疎遠になってしまったり…ってことも考えられますもんね。

前田さん:僕も心の病気になってそういう経験をしているので、それがあって余計にねこみたいにポジティブになりたいって気持ちは強いですね。

‐なるほど、でも今日一日こう話していて、まさか心の病気になってしまった過去があるとは思えないですね。

前田さん:それはよく言われますね。
今でも一応薬は飲んでるんですけど、でも最近は気にしなくなりましたね。
「薬飲んでればいいんでしょ」みたいな。

‐それこそまさしくねこっぽいですね。

前田さん:うん、それはねこに教わった感じですね。
それで、なんか都合悪いこと起きたら全部病気のせいにすればいいやーって。
心の病気に限らず、「今日頭いてーなー」とかってなったら「風邪だから仕方ないやー」って、それでいいんじゃないかなって思うんですよね。

‐なんというか、語弊があるように聞こえてしまったら申し訳ないんですけど、とてもたくましい方ですよね。

前田さん:たくましいですかね?ただばかなだけですよ(笑)。
普段こんな話しないですからね、ふざけてばっかりで。
あんまり人に努力しているところとか見せるの嫌なんですよ。
だからこの記事が出ると「前田さんって実はこんな人なんだ」って思われそうですね。

‐じゃあ次はそのふざけている姿を見てみたいですね。

前田さん:あ、写真展に来ていただければ。

‐あ、じゃあぜひよろしくお願いします!
(後日「煉と虎徹展」に伺った際のお話はまた後日レポートします!)


遠くに桜
今回の取材は、歩いていると景色の中にちらほら桜の見える時期に行われました。
「ねこで稼ぐからにはねこに還元する」、「癒着がだいすき」。
次々名言の飛び出す前田さんへのインタビューは、こうして短く記事にまとめる(長く感じますが、これでも結構カットしています)のが大変難しく、好奇心くすぐられる話をたくさん聞くことができました。


『小泉純一郎独白』の著者の常井健一さんが、BLOGOSの取材の中で、小泉さんは原稿チェックについて特になにも言わず、刊行された後で「後で読むよ」という感じだったと話していたのですが、まさに前田さんも同じように、私、管理人がGW前で仕事が詰まっていて(言い訳)、なかなか記事の監修が出せない状況で先に前篇をお送りしたところ、あまりにも早くに「だいじょーぶです!」と返していただき、驚かされました。

もちろん、原稿チェックするのが悪いわけではありません。
私自身もライターという職業病も相まって、取材を受ける立場になった際は結構な修正を出すタイプなので、どっちがいい、どっちが悪いという話ではないのですが、おそらく、なにかを、あるいはだれかをまとめる立場にある人間は、あくまでそのコンテンツに包括されたものの方向性が誤っているかどうかの確認ができればいいのかな、と思いました。


そして、クリエイターは一字一字まで徹底してこだわりをもつのではないかと。
それでおもしろいのが、前田さんの場合はプロデューサーであり、会社の代表でありながら同時にクリエイターでもあるというところ。


常に先を見据えた上でさまざまな仕掛けを施しながら、ものづくりも並行して行うというのは、並大抵の体力ではできません。
会社の長としてビジネスを進めながらも、作品に対する情熱でもってそれらを遂行できるのかな、と、しいてはつまり、ねこへの愛情が強いからこそ自己の作品にそれだけの思いやりを持てるのだと感じました。


今後も新しい発想で、自分の道へ進んでほしいです。
そしてその中で「癒着」を強めていきたいなぁ、なんて思うのでした。

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-----今回お話を伺った人-----
前田悟志さん

前田悟志さん。
ネコグラファー株式会社 代表取締役 ネコグラファー
代表作は写真集『煉と虎徹』。
GWはねこ休み展に初出展予定。



インタビュー/文:29cutecat管理人
取材写真:KK氏
記事内引用画像出典元:
前田さんちの猫事情。Facebook Todays Gallery Studio

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